第4弾です。
前回のあらすじ
唯ちゃんと決別したキョウスケは新たに『ワグナリア』というレストランで働く伊波まひると付き合う。そして、まひるはキョウスケに女装の趣味はないか、と聞くが…………。
「…………え?」
明らかに女の子の服を売っていると思われる店を指差したまひるちゃんは何故か笑顔だった。
「あの、まひるさん?ここ女性服しか置いてないっすよ?」
「その、住吉君が女装してくれたら殴らなくても良くなるから……出来れば女装して欲しいの。だ、ダメかな?」
恥ずかしげにそう言うまひるちゃんの顔に少し戸惑う。決して女装趣味なんてない。米津さんに「キョウスケ、メイド服似合いそうやな」と言われてた時期はあるけど、決して女装趣味はない。
しかし、このまひるちゃんの甘える顔を見ていると否定しづらい。
「ちょっと女装ってのはやり過ぎなんじゃないかな?」
そう答えると、まひるちゃんは俯く。
「……そうだよね。女装なんて恥ずかしいに決まってるよね。一緒に手を繋いで歩けたりしたら良いなぁ、って思っただけなんだけど……」
溜め息をついて、それから涙を堪えた瞳でじっと俺を見つめる。俺は萌え死に、それから決心して、
「や、やるよ、女装!力になるって言ったし、その、まひるちゃんと一緒に手を繋ぎたいし……」
と俺は最後の部分だけ小さな声で言う。
「そ、そんな一緒に手を繋ぎたいだなんて……!」
顔を真っ赤にしてまひるちゃんは俺を真っすぐに殴り倒す。
「あ、ゴメン!住吉君!?」
「うん…………早く男性恐怖症、治そうね」
「わ、私頑張るよ!」
両方の拳を胸の前に出してグッとこらえる姿も可愛いが、それ以上に殴られた頬が痛い。
「いらっしゃいませ」
店員が俺達に気付いて近付いて来る。
「今日はどのようなものをお探しですか?」
「えと、この人に会う可愛い服を一式下さい!」
まひるちゃんの指は俺の方を向いていて、店員の唖然とした目も俺の方を向いていた。
「え?ここは女性の…………」
「何も聞かずにさっさと選んで下さい……!お願いしますから」
軽蔑されたような目で俺を見て、それから苦笑いして、
「わ、分かりました……。それなら良いものがありますよ」
と言って店の中にある服から適当に選んで俺に渡す。
「えっと、一応今流行りのワンピースとタイツですが…………ご試着されます?」
「いや、俺は別に……」
「はい!是非お願いします!」
まひるちゃんは俺の気持ちを無視して着せさせようとした。成る程、今日俺はもう普通の男の子としては存在してはいけないみたいだ。
店を出て、俺は例の水色のワンピースに黒のタイツ、それからハイヒールを履かされ更にカツラを被らされた状態になっていた。
「…………ど、どう?」
「可愛いよ!住吉君、可愛いよ!私なんかより可愛いって!」
喜んでいいのかどうか分からなくなるが、どちらにせよやっぱり恥ずかしい。
「ほら、鏡で見てごらん!」
…………うん。思ってた二倍は気持ち悪い。これが自分だと知らずに見たならちょっとはマシだが、女装しているだけだと現実を知ると気持ち悪い。
「えっと、女装してもらったことだしそろそろ手を繋いでみようか」
そっとまひるちゃんは左手を差し出し、俺は恐る恐る右手を出す。そして、ゆっくりと手を握られる。
「…………あ、大丈夫だよ!私男の子と手を繋いでる!」
嬉しそうに話し掛けるまひるちゃん。そんなまひるちゃんの手は小さくて可愛かった。
「良かったじゃん!ちょっと治ったんじゃないの?」
「そうかも。これで住吉君と手を繋いで歩けるよ!私とても嬉しいっ!」
真正面にそう言われると俺は少し照れる。
「じゃ、じゃあこのままちょっと街を歩こっか」
俺達はそのまま白鷺周辺を歩く。すると、目の前から見覚えのある顔が。
…………タイラだ。
「…………ヤバい」
タイミングが悪い。俺が女装なんてしているところをタイラなんかに見られたら、ラグビー部に変な噂がたちまち流れて俺は今以上に廃人扱いされてしまう。
「どうしたの、住吉君?」
俺は必死に顔を下げてばれないようにする。タイラは俺に気付かず通り過ぎてくれた。
「ふぅ…………」
「さっき通り過ぎた人、なんか恐そうな顔してたね……」
まひるちゃんは後ろを見ながら少し不安そうに言う。
「死刑囚(タイラの学生証参考)……みたいだけどアイツは同じラグビー部の奴なんだよ。女装がばれないか心配だった……」
「あぁ、だから困った顔してたんだね。でも大丈夫だよ。今の住吉君は別人くらい可愛いからばれないよー」
…………少し死にたくなった。
「……ところでさ、住吉君は私のどこが好きになったの?こんな暴力女なのに……」
心配そうに彼女は俺にそう尋ねた。
「そうだな。初めてレストランでまひるちゃんを見て一目惚れしたんだよ。可愛くて真っすぐな女の子だったから」
そう言うとまひるちゃんは少しにやけるが、すぐに無表情になった。
「でも、私男の人を見たら殴っちゃうおかしな女の子だよ?好きな住吉君でさえ殴っちゃうんだよ?そんな私で本当に良いの?」
子猫のような瞳で俺を真っすぐと見つめる。
「周りがなんて言ったって俺はまひるちゃんが好きだよ?まひるちゃんをおかしいとか言って笑う奴は俺が殴ってあげる。だから、まひるちゃんはまひるちゃんのままで良いんだよ」
すると、まひるちゃんは笑顔のまま一筋の涙を流した。
「良かった。私、住吉君の彼女になって良かったよ……」
俺はいてもたってもいられず、まひるちゃんを抱きしめた。
「ふぇ!?す、住吉君!?」
「ゴメン、可愛すぎて我慢出来なくて…………!」
まひるちゃんを抱きしめたまま、俺はまひるちゃんの温もりを感じる。
「住吉君…………!」
まひるちゃんは緊張したのか慌てて俺のカツラを思い切り引っ張った。
「あ……」
今まで手を繋げたり出来たのは女装していたからであり、その要因が壊された今、もう彼女を止める術はない。
「ちょっ、待って!一回落ち着いて……!」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
気絶するかと思われる程殴られた俺はコンクリートの道に横になる。まひるちゃんの心配する声が段々と遠くなる中、それでも俺は一度たりともまひるちゃんを選んだことを後悔しなかった。
はい、終わりです。
最近、「ふぇ?」と言う仕草がイチ押しです。理解者はいないとは思うキョロです!