それは昼下がりの公園。俺は唯ちゃんとベンチに座っていた。そんな唯ちゃんが俺にそう話し掛けた。
「……実はさ、他に好きな女の子が出来たんだ」
「え?」
俺の言葉が理解出来ない、そんな風に見える唯ちゃんの顔。
「伊波まひるちゃんって言って、喫茶店で会って一目惚れした子がいるんだ」
「そんな…………!」
驚愕と悲愴が混ざった感情が唯ちゃんの顔に表れる。
「このまま他に好きな子がいるのに唯ちゃんと付き合ってたらいけない。だから、別れよう」
しばらく沈黙が続く。唯ちゃんは俯いていて表情がよく見えなかった。そして、
「そっか!キョロちゃんに好きな女の子が出来たんだ!」
何故か笑顔で唯ちゃんは顔を上げた。
「私みたいな女の子より、そのまひるちゃんって女の子の方がキョロちゃんにはお似合いだよ!」
「唯ちゃん…………」
「私のことは気にしなくても良いよ!だって私はキョロちゃんが幸せならそれで良いもん!一生会えなくなる訳じゃないしね!」
笑顔なのに、声はわずかに震えていた。
「今までありがとね。私、キョロちゃんと一緒にいれて楽しかったよ。……うん、楽しかった」
そう言うと、唯ちゃんはベンチから立って背中を見せて歩き始める。そして、スカートを翻させながら振り返って、
「さよなら」
と、笑顔で大粒の涙を流しながら告げると、また前を向いて走り出した。俺は、唯ちゃんが見えなくなるまでずっとその背中を目で追った。
そして、数週間が経ち俺はまひるちゃんと付き合うことになる。
夕方頃、まひるちゃんの働いている喫茶店『ワグナリア』に俺は足を運んだ。
「いらっしゃいませ……って住吉君!?」
ウエイター係のまひるちゃんが俺の姿を見て驚く。
「今日のデートまで後30分あるよね?どうしたの?」
「せっかくクラブが早く終わったから、たまにはまひるちゃんの働く可愛い姿を見ようかなっと思って」
そう言うと、まひるちゃんは恥ずかしそうに顔を赤くする。
「そ、そんなこと言わないで!可愛いなんて言われたら……殴っちゃうから」
拳を出そうとしたまひるちゃんを見て俺は慌てて距離を取る。
「ご、ゴメンね!?わざとじゃないよ!?とりあえずこっちの席に座ってて」
落ち着く為にまひるちゃんは俺を座らせてフロアに戻る。
すると、携帯の着信音が鳴る。
「今から遊びに行くわ」
というタイラのメールに対し、
「ゴメン、今寝てる」
と明らかに嘘だと分かるメールを返す。
それから30分後、まひるちゃんと俺は外で待ち合わせして街中を歩くことに。
「ね、ねぇ。良かったら手を繋いで歩かない?」
私服に着替えたまひるちゃんが照れながらそう提案した。
「その、男性恐怖症を克服するのにはまず好きな人と触れ合う方が良いかな、と思って。…………ダメかな?」
悲しそうに上目遣いを使うという反則的な可愛さに俺は耐え切れない。
「俺で良かったら」
そう言って手を出すと、まひるちゃんは頑張って俺の手を握った。握った、のは良いが、その力はチャオパを軽く超えるほどの握力で俺は悲鳴を上げる。
「やっぱりダメ!住吉君、早く離して!死んじゃう(住吉君が)!」
離すも何もそれだけ強く握られてはどうすることも出来ない。その間に俺の骨はミシミシと音を立てる。悪循環である。
なんとかまひるちゃんは俺の手を離すことに成功する。
「私のせいで…………ゴメンね」
シュンと落ち込むまひるちゃんがまた可愛かったが、そこは我慢した。
「しょうがないって。少しずつ治していけば良いじゃん。俺はまひるちゃんに協力するよ」
「住吉君…………」
嬉しそうに俺の顔を見て、それから店を指差して一言、
「住吉君って……女装の趣味ある?」
と俺に言った。
…………第4弾に続く!キョロです!
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