テンションが上がっている唯ちゃんは目を輝かせながら遊園地を見回している。
「唯が好きなので良いよ」
「それなら、あれから乗ろう!」
と、指差した先にはフリーフォール(上に上がって高いところから一気に落ちるアレ)が。
「…………え?」
顔を青ざめながら俺は唯ちゃんの顔を見る。
「あの、唯?俺が高所恐怖症なの知ってる……よね?」
「私ねー、怖がってるお兄ちゃんが見たいなぁ」
輝かしい笑顔でそう言って唯は俺の手を強引に引っ張ってアトラクションに乗らせる。
その後もジェットコースター、お化け屋敷、etc…………、と唯ちゃんはあえて俺の苦手なアトラクションを選んでいくことに。
そして、ベンチに座って少し休憩タイム。
「お兄ちゃん、大丈夫?ちょっとやり過ぎたかな……」
ベンチに元気なく座っている俺に少し心配そうに声を掛ける唯ちゃん。
「いや、大分やり過ぎだ。声枯れたし……」
「あの叫び声は面白かったよ!でもちょっと可哀相だからアイスでも買ってきてあげよう!」
唯ちゃんはそう言って俺を残してどこかに行く。しばらくするとアイスを片手に持って唯ちゃんが現れる。
「あれ?アイス一つだけ?」
「うん。お金ないからお兄ちゃんと一緒に食べようと思って……」
その言葉に俺は唖然とする。
「お兄ちゃんとなら一緒のアイス食べれるよ。っていうかむしろ一緒のアイスを食べたい!」
「ちょっと待て、唯。それは色々とまずくないか?」
「え?ここのアイスはおいしいって評判だよ?」
「いや、アイスの味の話じゃないから!」
天然な唯ちゃんは不思議そうに俺を見て、それからアイスを食べ始める。
「うん!やっぱりおいしいよ!ほら、あーん」
食べかけのアイスをスプーンですくって俺の口に持って来る。それを食べると冷たくて、そして甘かった。
「唯。俺だから良いけど他の男の子にこんなことしたらダメだよ」
「もう、お兄ちゃんったら。お兄ちゃんだからやってるに決まってるじゃん」
喜んでいいのか注意するべきかの葛藤に苦しんでいると、唯ちゃんがあるものに目を奪われる。
「ん?」
唯ちゃんの目線の先にはイチャイチャしてるカップルが。
「どうしたの、唯?」
「いや、他の人達から見たら私達ってどういう風に見えてるのかな、っと思ってね」
そう言う唯ちゃんがいつもより少し真面目な顔だったのを俺は気にせず、
「え?仲が良い兄妹に見えるんじゃない?」
と答えると、唯ちゃんは笑って、
「そうだよね!良かったぁ……」
と言っていたけど、その笑顔はいつもの笑顔じゃなくて、ただ何故かその時は物寂しいように見えた。
それからアトラクションを回り、すっかり夜になった頃、手を繋いでた唯ちゃんが、
「最後に観覧車に乗ろうよ」
と言ったので、俺も承諾して観覧車の中へ。
隣同士に座り、観覧車は段々と二人を高いところへ導く。
「今日は楽しかったね」
「うん。結構楽しめたし良かったと思うよ」
俺のその言葉の後で、唯ちゃんは真剣な眼差しで見てくる。
「あのね、実は私…………お兄ちゃんに黙ってたことがあるの」
「黙ってたって……何を?」
「私ね、実はお兄ちゃんの妹じゃないの」
その真実に驚愕する俺。
「本当はアニメの世界から来た異世界の人間なんだ。お兄ちゃんが私をずっと応援してくれてたから一日だけこっちの世界に来れたの。だから、今までの記憶は全部嘘なんだよ。お兄ちゃんには妹なんていない」
「そんな…………!」
あまりの衝撃に言葉が出て来なくなる。
「私がこっちにいれるのは一日だけ。だから、今日が終わったらお兄ちゃんは私のことに関する記憶が全部消えちゃう。つまり、私はいなかったことになるんだ」
「どうして……」
「そんなの簡単な理由だよ。私がお兄ちゃんのことを好きだから。一日で良いから一緒にいたかっただけなんだ」
そう言う唯ちゃんの姿が涙でぼやける。
「泣かないで。せっかく会えたんだから。確かに私は消えるけど、もしかしたらまた会えるかもしれないよ?私はお兄ちゃんのことは絶対に忘れない」
笑顔で話す唯ちゃんの目からは一筋の涙が流れていた。
「だから、サヨナラは言わないからね。何年後になっても私はお兄ちゃんとまた会える日を楽しみにしてるよ」
繋いだ手の力が強くなる。
「だから、だから、そんな悲しそうな顔しないでよ。お兄ちゃんは笑ってた方が素敵なんだから」
泣きながら無理に話す唯ちゃんに耐えられず、俺は唯ちゃんを抱きしめた。
「ふぇ!?ど、どうしたの、お兄ちゃん!?」
最初から言いたかったこと。それだけは今の内に言っておかないといけない、そんな気がした。
「ずっと言いたかったことなんだけどさ、俺は唯のことが…………」
はい、終わりです。
明日が試合にも関わらずこんな日記ですいません。キョロです。
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