古賀さんに、きっとお母さんが悲しんでるよ、と言われました。 今日も元気に妄想します。 —昨日のあらすじ— 今日はお兄ちゃんと初めてのお出かけ。行き先は動物園。 でも、今日のお兄ちゃんはいつもと何だか違う。 いつもよりちょっと優しくて、ちょっと強引で…。 私のお兄ちゃんがこんなに格好良いわけがないのに。 電車に揺られ、最寄り駅に着いた二人は、動物園直結のバスに乗り換える。 どこに座ろうか悩んでいたら、お兄ちゃんが、くいっと私の手をひく。 「俺…彩と一緒に座りたいな。」 もは…っ!お兄ちゃんのこの一言で意識が朦朧とする。 「う、うん…。でもこういうのって初めてだし…。ちょっと恥ずかしいな。」 隣に座るのをためらっていると、バスが急発進して前によろめいてしまう。 「だから早く座れって。」 お兄ちゃんはそう言って、強引に私を引き寄せる。 「ほら、こうしとけば大丈夫!」 お兄ちゃんの左手が私の右手をつかむ。 もひ…っ!低反発まくらに顔をうずめて呼吸困難になったあの時みたいに苦しい…っ! あまりの恥ずかしさにうつむいていたら、お兄ちゃんが私の顔を覗き込んできた。 「彩、どうしたの?何か辛いこととかあった?」 「な、何もないよ、お兄ちゃん!ただ…。お兄ちゃんとこうやって一緒にいられるのが嬉しくて。」 —軽く死ねる。— 「あれ?お兄ちゃん、今何か言った?」 「え?何も言ってないよ!気のせい気のせい。」 なんだ、空耳かぁ。今「軽く死ねる」って聞こえた気がしたんだけどなぁ。 でもお兄ちゃんがそんな二次元の人が言うような台詞言うわけないもんね。 そんなやりとりをしているうちに、二人は動物園に到着した。 『今日は午後3時から、羊のレースを行います!このレースは、当園の羊と一緒に、お客様が走っていただくレースでございます。見事1位になられた方には、等身大の羊のぬいぐるみを差し上げます!参加を希望される方は、○○会場までお越し下さい。」 「お兄ちゃん、羊さんのレースだってっ!私、羊さんのぬいぐるみ欲しいなぁ。」 「彩はぬいぐるみ大好きだもんな。よし、じゃあ彩のために俺が走ってやるよ!」 のう…っ!お兄ちゃんの潔さに感激し、左の小鼻から鼻血が出そうになる。 ワーワー!!!! 参加者は10人。特設会場には大勢の観客。 背があまり高くない私は、人ごみのなかに埋もれてしまう。 お兄ちゃんと一緒に走るのは、右から2番目のオレンジ色のスカーフを首に巻いている羊さん。 『それではいきます!位置について…よーい、ドン!』 お兄ちゃんの隣にいる、若い女の人と走っているグリーンの羊が速い。 と、ここで序盤隣でぐずっていたお兄ちゃんのオレンジの羊が、いきなり何かに目覚めたかのように走り出した。 ここからお兄ちゃんの独走劇が始まる。 さすが、ラグビーで走り込んでいるだけある。遂にはステップまで踏みながら走りだす。 お兄ちゃんが左脇にラグビーボールを抱えている幻想まで見え出してくるから不思議だ。 「お兄ちゃん、格好良い!」 お兄ちゃんはオレンジの羊とともにぶっちぎりの1位でゴールした。 表彰式にて。 おっきい羊さんのぬいぐるみを受け取ったお兄ちゃんは、いきなりきょろきょろと辺りを見回し始めた。 「どうしたのかな、お兄ちゃん。」 するとお兄ちゃんが私を見つけて、にこっと笑って私の方に駆けてくる。 「はい、彩。これが欲しかったんだろ?」 「うん…うんっ…!」 私の目から一筋の涙がこぼれる。 「お兄ちゃん、大好きっ!」あまりの嬉しさから、不意にお兄ちゃんに抱きついてしまう。 —軽く死ねる。— 「あれ、お兄ちゃんまた何か言った?今「軽く死…」」 「あ!そういえばさ、この羊さんに名前つけよっか!」 あれ、もしかして今ごまかした? …まぁいっか。こんなに格好良いお兄ちゃんに限ってそんなこと言うはずがないしね。 「そうだね!きっとそっちのほうが羊さんも喜んでくれるしね!」 でもお兄ちゃん、私のぬいぐるみにいつも変な名前ばっかりつけるしなぁ。 こないだはIKEAで買ったねずみのぬいぐるみに「ぽてこ」ってつけてたし。ちょっと心配。 でも今日のお兄ちゃんは何だかいつもより格好良いし…きっと羊さんの名前も格好良いのにしてくれるはず…! 「名前何にするの?」 「そうだなぁ。じゃあ……」 「じゃあ…?」 「澤デラックス。」 明日に続く。 バイト前にお届いたしました。 彩坊 |